PiPiちゃんの誘惑2
午前1時半
(草一の独白)
PiPiちゃんとの厳しい約束は、果たされた。
(オママゴト的だが、この方が「自分で決めた義務を果たした」と言うよりも苦しい作業が遙かに楽になる)
実際のところ、このお人形が家に来るまで、怠惰な自分が週末の夜、読書のために部屋に籠もるということはなかった。これも、PiPiちゃんの圧倒的な存在感のおかげだ。私の敬愛するお人形作家の先生(正式名称:平凡な道が巡礼路に変わるその潮目、『顔の無い都市』とトウキョウの国境に位置する神秘的な工房におわします天使製造人)に感謝、感謝。いくらフィクション相手の一人二役の腹話術といえど、相手が木彫りの熊では入り込めない。
それと、空想にのめり込む自分の性向が、人形との生活に合っていたのだろう。空想癖は人形を持つ者にとって、重要な才能の一つなのかもしれない。
固まったフィギュアの隣に、体温を持ったPiPiちゃんがいる。
平凡な道も、旅人の汗とイマジネーションを吸い込んで巡礼路に変わる。
フィクションの存在と交わした約束を果たせば、だんだん現実は『現実』に異化される。
『現実作り』の巡礼路、ー『顔の無い都市』のミクから教えてもらったこの謎めいた言葉は、そういう意味なのだろうか…