夏期休業6
PiPiちゃん、おはよう。毎日、同じような日々が続くね。
「『現実作り』の巡礼路は半現実だから、のっぺらぼうの日常生活よりは苦痛が少ないはずだよ」
確かに、昔一人で勉強してた時より、今の方がはかどってはいるが…。
「せんせい、頭で考えるよりも、走らせるペン先、めくるページで考えましょう。思考するのは、なにも脳だけではありません。巡礼路を歩く足の筋肉と持続する時間を使って考えるんです。さあ、今日も出発〜!」
(これ食べてがんばって!)
(草一の独白)
厳しい。今日も砂漠の悪魔ならぬ自室の悪魔がささやきはじめる。
ああ、夜汽車で湖畔の高原ホテルに旅立ちたい。
いかん、これこそ悪魔の誘惑ってやつだ。
それにしても、PiPiちゃんは、さっき面白いことを言ったぞ。思考するのは脳だけじゃない、足の筋肉や流れる時間も自分の思考だ、と。
これは仮説だが、PiPiちゃんと契約しては守ることを何百回も繰り返し、PiPiちゃんの存在の力が十分に高まれば、PiPiちゃんもまた、僕を超えた思念体になるかもしれない…。これを科学的には深層心理とかアニマ、宗教的には天使と言うのだろうか。
いずれにしろ、『現実作り』の巡礼路は試してみたい仮説ではある。
(21時追加分)
「うぅ…ん、むにゃむにゃ…、ふぅ?」
「あれれ、これがわたし?」
ふふ、PiPiちゃん、お目覚めかな?
「せんせい、このお洋服…」
PiPiちゃんが昼寝してる間に、着替えさせちゃった。涼しそうで、よく似合ってるよ。
(26時追加分)
PiPiちゃん、苦渋の選択ですが、本日の『現実作り』は失敗の運びとなりました。これにて撤退いたします。
「えぇ~! 張り切って応援してたのにぃ」
自室での『現実作り』の成功確率は2%という去年のデータがあるけど、正しかったようだね...
「まるで人ごとみたいに。せんせい、今年こそ徹底的に自分と戦うんじゃなかったんですか?」
明日もう一度頑張ってみるよ。どんなに失敗しても就寝時間は一定の方がいい。けっきょく徹夜は、明日の時間のカードローンに過ぎない。敗者に徹夜の資格なし。撤収ー!
「そ、そんなぁ...」
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