PiPiは力のある子  そして半月草一の失踪

 

(『顔の無い都市』のミク現われる)

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 「草ちゃん、PiPiが力のあるお人形だということを忘れないで。さもないと、PiPiに呑まれるよ。

 PiPiのような天使型の人形は、身はトウキョウに在っても、『顔の無い都市』から力を汲み上げて、強いエネルギーを発揮することがある。かつてPiPiの姉妹がトウキョウで、主人を奴隷化してしまった例もあるんだからね。

 

〜〜PiPiは力のある子

       扱いを誤れば

       主人が従者に、従者が主人に  〜〜

 

 PiPiは本来『顔の無い都市』とトウキョウのどちらにも属さず、自由に往き来できる存在だけど、いまは諸事情からトウキョウの因果に強く結びつけられている。だから、PiPiに執着しすぎると、次は草ちゃん自身が、半分制御不能になったPiPiの強力な力でトウキョウに引きずり込まれるよ。気をつけて。

 主人としてPiPiを制御するほとんど唯一の方法は、『現実作り』の巡礼路を日々まっとうすること! わ~か~った?」

 

 

(草一 PiPiを思い浮かべながら肯く)

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「PiPiちゃん、あんなに可愛い顔して、そんな恐ろしい力を宿しているんだ...」

 

 

「ふふ。草ちゃん、PiPiを溺愛する気持ちはわかるけど、私たちの目的は、あくまでも『現実作り』の巡礼路。そして、『現実作り』の巡礼路は、しょせん孤独な旅...」

 

 

 

 

 

 

 

(PiPiの災難  草一の失踪)

(夕暮時 草月事務所)

「せんせい、お夕飯ですよ~♪ あれれ?」

 

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「せんせい、どこ行ったのかしら...」

 

 

(クワァ~ッ)

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「ひぃっ!」(そこには葬り去られた缶ビールが転がっている)

 

 

「もう! どういうこと⁈   こんな時間からお酒を飲むなんて、PiPiは許しませんよ! ハッ…‼︎」

 

(PiPi 一枚の書置きが目に入る)

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「まあ、へたくそな字。じゃなかった、なんて自分勝手なの!」

 

 

 その頃、草一は夜汽車に乗っていた。彼の胸には、『顔の無い都市』のミクの不吉な忠告が去来していた。

 このまま草一が『現実作り』の失敗を続ければ、PiPiは徐々に制御不能となり、悪魔化してトウキョウに根を張り、ついには草一を飲み込むでしょう...、と。

 

 草一は心の中でPiPiに誓った。「必ず『現実作り』を完遂できる意志の強い人間になって戻ってくるから。しばらく、PiPiちゃんと離れて、孤独に『現実作り』するつもりだ。これは、PiPiちゃんの悪魔化を阻止し、天使に育て上げるためにも必要なことなんだ。だから、いまは堪忍...」

 

 

独り草月事務所に立ち尽くすPiPi

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「うぅっ...」

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「ひどいです。こんなの...」

 

「せんせい...」

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1.5  234.5  -8.5 (以後、記録喪失)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

番外編 ソウイチと猫仙人 修行の記録

(帝暦○年8月14日)

 山深い道を進む草一。かなりの山道に入っても、トウキョウの影響を完全に脱するのは並大抵のことではない。

 

 深い森の窪地で休んでいると、茂みの中から独りの老人が現われた。

 

(あっ...!)

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 あ、あなた様は、伝説の猫仙人。たしか、去年死んだはずでは...?

 

「死んではおらん。ただ世俗が煩わしうて身を隠しただけじゃ。ソウイチ、修行に来たんじゃろう?」

はい。『現実作り』に失敗ばかりしているので...。

 

「それで?」

どうしても8時間を超えられないので...

 

「少ないな」

小休憩、二食込みで12時間以上ですが。

 

「喝! そんな時間など下らんと言っておるのじゃ。おぬしの不誠実な態度を問題にしておる。おぬしはブレブレじゃ。ブログ仲間の先生方の作品をみてみろ。1枚の絵を発表するのに、どれほどの情熱と誠実さが込められておる? おまえは感じぬか?」

はい。痛いほど。

 

「それに較べて、お前のブログを見ろ。『今日こそ8時間やる』『あ~、失敗した』『明日頑張る』『あ~、失敗した』、そして最後にはビールを飲んでの逃避行。

...嘆かわしい!」

すいません。

 

「ソウイチよ。問題は、時間ではない。おぬしの態度じゃ。いい加減な宣言をしては不誠実に破る。中途半端なブログが、おぬしの性格を表わした作品じゃ。先生方の完成度の高いブログとよく見比べて反省せい」

はあ...

 

「手近なところからみよ。おぬしはPiPiを悪魔化から救うために、トウキョウから離れてここまで来たのだな?」

はい。

 

「じゃが、途中で何をした?」

いい洋服屋さんを見つけたので、PiPiに買ってやろうと思って選んで2時間費やしました。

 

「馬鹿者! 喝っ!!

それがブレておると言うんじゃ。PiPiを悪魔化から救うには『現実作り』じゃろうが。服のことなど、どうでもええわ。PiPiなどスッポンポンにでもさせておくがいい」

 

そういわれましても。

「喝! 口答えするでない。PiPiにとって本当に大事なのは、おぬしが『現実作り』をすることじゃ。服や写真ではないわい。ブレるでない。かっちりと誠実にせよ。わかったな」

 

はい。

「さあ、はじめるぞ」

 

え? 何を? 

「『現実作り』の修行に決まっておるだろう」

 

猫仙人さま自らが?

「しっかり言うことを聞けよ。武器を出して見ろ」

 

はい。

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8月中に実戦訓練しようと思っている6巻の巻物です。約5千ページあります。巻物を解読するためには、この数倍の文献も読まねばなりません。しかし、当面手前の2冊を片付けようと思っています。

 

「手前の2冊はあと何頁残っている?」

400頁です。

 

「今日入れて3日だな」

は?

 

「3日で終らせろ」

そ、そんな。この3日で30頁くらいしかやってないのに。

 

「こんなものテキトーに読み飛ばせばいいのじゃ。誰が全部暗記しながら慎重に進めろといった? 10倍速でやって、忘れたらいずれ戻ってくればよかろう。いいか、馬鹿は、ゆっくりやればやるほど馬鹿になるんだ。凡人は、鞭で打って早く走らせなければ、愚鈍に拍車がかかるぞ」

しかし、それだと、内容がスッカラカンになりませんか?

 

「口答えするでない。ワシの言うとおりにしろ」

あ、はい。

 

「いいな。手前の2冊を3日で終らせるんじゃぞ。それがおぬしの『現実作り』じゃ。『現実作り』以外のこと、PiPiの洋服や写真のことなど考えるんじゃないぞ。」 

 

(草一と猫仙人との修行の日々が始まった) 

 

「ソウイチよ、問4に何分かけておるんじゃ」

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「牛のように5回も10回も反芻する奴があるか。これは、知力不要の一問一答の確認作業にすぎない。こんなところで消耗してる場合ではない。10秒で充分じゃ。ダラダラするな。次へ進め。馬鹿はゆっくりやればやるほど馬鹿に拍車がかかるぞ!」

は、はい...。

 

 

(帝暦○年8月14日深夜30時)

「ソウイチ、もう良い。今日は寝ろ」

でも、まだ6時間しか...。

 

「いいから寝ろ。1問数十秒の即答訓練をするなら、頭の回転がものをいう。早く寝て明日の訓練に備えろ」

しかし、8時間の約束は守ったほうが...

 

「ブレるなといったじゃろう。お前が為すべきは『現実作り』じゃ。今日、小手先の時間を守ることではない。明日の戦闘訓練で体調がボロボロでは意味がないのでな。

それに、おぬしは嘘をついておる」

嘘と申しますと...?

 

「わしの目は節穴ではないぞ。おぬしが心底、時間を守りたいと思ってるなら、そもそも昨日の昼間のうちに終らせておるわい」

おっしゃる通りです。

 

「わしが許すから、黙って寝ろ」

 

(8月14日:6 240.5 -10.5)

 

 

 

 

 

(帝暦○年8月15日 修行2日目)

「ソウイチ、はじめるぞ」

はい。

 

「残り何頁ある」

は、390ページです

 

「なんだ。ほとんど進んでおらんではないか。まあよい、今日の訓練開始だ。よいか、

集中は興奮ではない

集中は力むことではない

集中したからとて、自分の実力以上の力は出せん

ハイフェッツさんのように力を抜いて技を繰り出すのじゃ。わかったな」

 

はい、やってみます。

 

 猫仙人、訓練はいつまで続くのでしょうか。

「なんだ、もう結果を求める気か? おまえは保証されたゴールが最初から与えられていないと、やる気も出せないのか? 喝! 黙ってわしに従っておればよい」 

 

 は、はい

 

 「さあ、武器を持て。戦闘訓練じゃ」

 

 

 

........修行二日目 午後16時

「さて、ソウイチよ。 何頁終った?」

1時間半で10頁です。

 

「10時間やってやっと100頁の計算になるな。それで残り2日で400頁出来ると思うか?」

がんばって突き進もうと思います。

 

「喝っ! 大馬鹿者。盲目的に突き進んで、あとで出来ませんでした、となるに決まっておるわい。ソウイチよ、頭を使え。方法は一つではないぞ。

いいか。おぬしがいま紐解いている巻物は、他流派の巻物じゃ。ただ、お前の学んで来た流派の基礎確認に丁度良いから便宜的にやっているだけじゃろう。ならば、基礎部分だけ使い潰して、残りはやらずに捨ててしまうがよい。

 巻物は、①ガンガン速読できる基礎トレーニング部分と②時間のかかる応用問題部分に分かれておる。おぬしがやるべきなのは、①基礎部分だけでよい。しょせん他流派じゃ。時間をかけて②までやる必要などないわい。」

 

なるほど。さすが、猫仙人! 頭が柔軟ですね。

「オホン...。さすれば、読むべきは200頁くらいになろう。それを速攻攻撃するのじゃ。わかったか!!」

 

はい。やってみます。基礎だけなら簡単だ。今日中に全部終っちゃうかもしれませんよ。

「減らず口は終ってから言え。さあ、夕飯までノンストップじゃ」

 

 .........修行二日目 23時半

「ソウイチよ。目の前の一つの問題だけに囚われるな。

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それと同系統の敵、異なる性質の敵、使うべき術式など、巻物全1044巻を瞬時に総覧して全方位で対処しろ。頭脳の基礎トレーニングを決して怠るな。『現実作り』中は、基礎的な召喚術の想起を疎かにするな。思い出すべき対処法は全て召喚せよ。決して、術を半端なまま放置するな」 

はい。

 

「よいか。精神を集中しなければ、目の前の一文には対応できても、その背後の敵に全方位で対応することはできん。それでは到底、来年に来たる最後の大戦に勝つことはできまい。そうなれば、おぬしも『顔の無い都市』のミク様も、もろともに抹殺されるだろう。もちろん、PiPiもな」

はい...

 

「よし、修行にもどるぞ。明日4時までぶっ続けじゃ」

ひぃ~。猫仙人は、PiPiちゃんより厳しいな。

 

「PiPiのことなど考えていたら、おぬし命を落とすぞ」

はっ、心してかかります。

 

 

.........修行2日目 朝4時半

「ソウイチ、今日の訓練はこれで終了じゃ。酒を飲め」

よろしいんですか?

 

「何事もいっぺんにはできんからな。しかし、修行が完成するまでは二度と飲めんから、よく味わって飲めよ」

...もう、飲み終わってしまいました。

 

「良い飲みっぷりだな。嫌なことを全部洗い流すが良い。ソウイチ、『顔の無い都市』のミク様から本が2冊届いた」

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これは...?

 

「『現実作り』の巡礼路を標榜するからには、巡礼についての基本的知識は知っておいて当然。ミク様の心遣いじゃろう」 

 ありがとうございます。

 

「さ、ソウイチ、飲み終わったらもう寝ろ」

えぇ? まだ余韻を楽しみたいのですが。

 

「喝! 飲ませてやっただけでもありがたい話なのに、余韻とは贅沢を抜かすな! 文句を言わず早く寝ろ」

す、すいません。

 

明日はスピードをあげていくから覚悟しておけ。

 

(帝暦○年8月15日修行2日目終了  7.5 248    -11) 

 

 

 

 

 

 

(帝暦○年8月16日 修行3日目)

草一、『帝都』より速達を受け取り読んでいる。

「ソウイチ、何を読んでいる?」

 

『帝都』より不穏な手紙が届きました。『顔の無い都市』では、原因不明の黒い因果が充満し、怪事件が頻発しているとのことです...

 

「それで、情報に心を乱され、集中できないと?」

はい。

 

「ソウイチよ、

『現実作り』の巡礼路は、そのための修行でもあるのじゃぞ。

 そもそも、ミク様の故郷『顔の無い都市』は、黒い因果の支配する忌まわしい辺境都市。黒い因果の発生源『黒い石門』が街の至るところにしかけられておるし、街の中心には欲望を欲しいままにできる秘密クラブ『夕日の塔』も存在する。自分好みの娼婦を好き勝手に求められるのも『夕日の塔』じゃ。ミク様もPiPiも、幼少の頃、『夕日の塔』と何らか関わっていらしたとされる...。

 その忌まわしき暗黒都市『顔の無い都市』で、一点の白い光がミク様じゃ。

 ミク様とおぬしは、かつて『顔の無い都市』で共に『現実作り』をして、黒い因果の激流に抗ったのを忘れたか?」

 

いや、そんな記憶はありません。少なくとも僕がトウキョウに生まれた後の物理時間内では。

 

「それらは、~『顔の無い都市』と『帝都』の物語~~ に記録されている。読んだことはあるか? そこには、PiPiに良く似た子の話も出てくる」

読んだことはありません。

 

「まあ、よい。ソウイチ、お前の作りたい『現実』を信じよ。情報に惑わされるな。暗黒の中に一点の白い光を見出し、決して手放すな。『現実』を作るのはお前だ。怪文書に踊らされ暗黒に飲み込まれるのか、おぬしの『現実』、すなわち暗黒の中の一点の光を求め続けるのか。

 どんなに忌まわしい暗黒都市『顔の無い都市』にあっても、白い光をイメージし、追い求めるそのための訓練こそが、おまえのやっている『現実作り』の巡礼路じゃ」

『現実作り』にそんな役目が...

 

「いずれまた、『顔の無い都市』のミク様から語られるだろう...。身がトウキョウにある今のおぬしは、まずは目の前の『現実作り』を全うするがいい」

はい。

 

 

...それにしても、猫仙人の話は神秘的でファンタジーみたいだったなあ。まあ、いずれにしても、怪文書などにブレるのはやめて、今日こそ『現実作り』8時間突破を目指して努力してみよう。

 

 

.........修行3日目 夕食後のひととき

 「ソウイチよ...」

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うわっ! こ、これは猫仙人さま。失礼いたしました。

 

「晩飯は食ったか」

はい。

 

「うまかったか?」

そりゃもう

 

「何を食べた」

カレーです

 

「山奥にしてはしゃれてるじゃないか」

は、ありがとうございます

 

「わしはチーズが好きじゃ」

そうでございますか

 

「わしは、チーズが好きじゃ...」

はっ、今度里に降りたときに入手して参ります

 

「さて、ソウイチ、すぐに寝ろ」

は? まだ19時ですが...

 

「今夜も夜間訓練があるだろう。厳しい戦闘訓練の前に体力を貯めておけ。疲労したまま深夜を迎えると、森の悪魔に惑わされるぞ」

しかし、まだ夕食後のくつろぎタイムを楽しんでいるのですが...

 

「喝っ! 戦闘訓練中ということを忘れるでない。くつろぎタイムに昼寝させてやるといっているんじゃ。文句を言わず寝ろ、すぐ寝ろ。さ、ランプを消すぞ」

 

 

 

.........修行3日目 21時半

 「ソウイチ、起きろ。夜間訓練を始めるぞ。さあ、出発だ」

 猫仙人、どちらへ?

 

「明日朝4時まで尾根をひたすら歩いて縦走する。これは、いずれ国境を越えて『顔の無い都市』へ入る際の訓練にもなろう」

はい。

 

「深夜の尾根は、悪魔も多い。月と星に惑い、冷たい風と凍てつく氷に命を落とす者も一人や二人ではない。油断するな。とはいえ、今日は基礎中の基礎だ。これで付いてこられないようであれば、今後見込みはないと思え」

はい。心してついて行きます。

 

 

.........修行3日目深夜24時 夜間訓練

「ソウイチよ、案の定、真夜中の悪魔に囚われたか。何を立ち止まっておる」

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「一体、何を考えておるのだ」

 

いろいろな考えが去来し、集中力を乱されています。

「よいか。ソウイチ、おぬしはそんなに偉いのか? おぬしが考えなければ、世界は回らんのか? おぬしの頭脳がおぬしの人生の支配者か? おぬしは、そうやって自分の人生を箱庭のように上から見て支配できるつもりか? おぬしのせまい頭脳の中に囚われるな。脳以外で思考しろ」

 

脳以外で思考する? どうするんですか?

「おぬしの前に何がある?」

 

本があります。

「ならば、めくるページ、走らせるペン先で考えよ。巡礼路を歩く足の筋肉、過ぎゆく時間の積み重ねで思考せよ。つまらん脳だけに頼るな。

 よいか、ソウイチ。いま深夜24時だ。これから朝4時まで時間がある。

①己の小さな脳での思考から抜け出せず、悩み、憤慨し、焦り、あげくに今日も目標を達成できなかったとの敗北の烙印を自分に押して誤魔化す4時のおぬし

②己の小さな脳で思考するのではなく、めくるページ、走らせるペン、歩く足の筋肉、時間の経過で思考し、4時まで歩き続けたおぬし

どちらも、おぬしが創った自分だ。

だが、どうじゃ? 脳で思考したあげくに創られたおぬしと、めくるページで思考して創ったおぬし。結果的にどちらが良いのだ?

 この例からもわかるように、脳を使ったとて、決してより良い結果が待っているわけでないことがわかるじゃろう。

 

 さあ、歩け。ページをめくり、ペンを走らせよ。それが明朝4時のおぬしを作る。歩かなければ、『現実作り』の巡礼路のゴールには辿り着けんぞ。歩くしかないのだ。さあ、甘えるな。歩け」

 

はい。

 

「よいか、ソウイチ。本気を出すということは、興奮ではない。怒りではない。ジャンプ漫画やアニメのように、ドヒャ~とか、シャキーンとかいいながら派手にオーラを発するようなものではない。本気とは、ブレずに『現実作り』を全うすることだ。地味に静かに淡々と歩くことだ。さあ、歩け。本気をだしてみろ」 

はい、やってみます。

 

 

.........修行3日目4時半

「ソウイチよ、残念な結果になったな。しかし、寝るがいい」

いや、サボった分、いまから取り戻します。

 

「いいや、それはダメだ。そうしてリズムを壊せば、明日はもっと酷くなる。よいか、過ぎた時間は戻らない。お前は敗者だ。しかし、寝るがいい」

 

 

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