森に迷い 焦る
24時30分
(草一の独白)
今日は、ダメかもしれん。机にかじりついているが、焦るばかりで作業が手に付かない。形だけ座ってても意味が無い。いっそのこと、今日は諦めて明日から…。
「落ち着いてください。せんせいは、わたしと約束した『現実作り』の失敗が怖いんですか? それとも、実際の現実に追われて焦っているんですか?」
PiPiちゃん、実は今月末に『帝都』でコンクールがあるんだ。300人くらいが一同に集まって成績を競う。そこで下位1割は、死刑宣告を受ける。
「ひぇ、なんて恐ろしい…」
だから、過酷な現実に直面して焦っているんだ。正直いって、PiPiちゃんと『現実作り』のオママゴトをしてる場合じゃない。
「せんせい、わたしをほっとかないで。せんせいが現実ばっかり気にして、『現実作り』ができなくなったら、わたしは死んじゃうんだよ。えぇ~ん!」
PiPiちゃん、僕が悪かった。堪忍。これからは、PiPiちゃんとの『現実作り』優先~!! うん。もともと『帝都』の現実に追われる生活は、捨てたんだから。
「ほんとう?」
もちろん
「わーい! きっと、PiPiと『現実作り』していれば、自然にコンクールの成績も上がるね」
そうだね。現実に追われようが、『現実作り』をしようが、やることは同じ。要は心の持ちようだ。
(草一の独白)
たとえば、サッカー選手はボールを網の中に、ゴルフ選手は木の棒を球に打ち付けて遠くの穴に落とすことに、血眼になっている。そんな不条理なフィクションに命をかけているわけだ。ならば、僕は『現実作り』に人生を見出すことにしよう。とすると、僕が恐れるのは、むしろ『現実作り』に失敗して、PiPiちゃんが前みたいにへそ曲げることだ。
「そうですよ~。『現実作り』に失敗したら、へそ曲げてそっぽ向いちゃいます。わたしのお顔を見せてあげないよ~」
そりゃ困る…。2時半までがんばろ…