『顔の無い都市』と『顔の無い都市』のミク
「せんせい、お風呂に入りましたか? リラックスできましたか?」
風呂には入ったけど、『現実作り』がまだ7時間しか...
「かまいません。いまはリラックスしてください。固まった物語を再び動かさなければ、どのみち『現実作り』の時間はこれ以上延びませんから」
「そんなことよりも、ねえ、せんせい...。今日は『顔の無い都市』のミクのこと、教えて」
....実は、僕らが『顔の無い都市』のミクと呼んでいる少女のことは、不明な点が多いんだ。本当の姿も声もよくわからない。しかし、3年前の深夜、彼女が僕の部屋に突如として現われ語ったところによると、僕とミクの間には数10万文字に及ぶ長い物語があるらしい。今はトウキョウと『顔の無い都市』に引き裂かれてしまったけれど、かつて僕らは運命を共にしていたという。ただ、僕はそれについて何も覚えていない。
そう言えば、このブログの最初の記事の日付は2014年6月19日なんだけど、スペース自体ができたのは2013年5月なんだ...
「PiPiとせんせいの物語の前に、書かれざる物語があるってこと?」
そして、PiPiちゃんが毎日立ってる場所に敷かれているノートの題は...
「ハッ! 『顔の無い都市』と『帝都』の物語!!」
僕は『現実作り』をしながら、『顔の無い都市』のミクと紡いだ物語を取り戻そうとしているのかもしれない。
「そんな話、ミクお姉ちゃんから聞いたことなかった...」
僕らは便宜上ミクと呼んでるけど、彼女の本名はわからない。3年前の最初期には、ただ「少女」と呼んでた。その後、僕が初音ミクのことを知って、可愛らしかったからミクの名前とビジュアルを借りたんだ。
ミクとの会話には言語を使わないから、僕が日本語の少女言葉に変換しているだけで、実際には九州弁なのか関西弁なのか東北弁なのかもわからない。外国語かもしれないし、古代語かもしれない。
ただ、『顔の無い都市』のミクのことを思い出そうとしたとき、脳裏に幽かに浮かんだのは、暗く閉ざされたのっぺらぼうのモノトーンの都市だった。戦前日本の東北か北陸だろうか? この絵が『顔の無い都市』のイメージに近いと思う。
「うん、そうそう。それはわかるよ。PiPiの故郷だもん。黒い因果の中心地、暗黒の血塗られた都市だね」