『顔の無い都市』からトウキョウに

(草一の独白)

 

「『顔の無い都市』からトウキョウに使いを出すよ」

 

『顔の無い都市』のミクは、確かにそう言った。しかし、どうやって? 『顔の無い都市』は、想像の世界。現実と地続きではない。

 

空想と現実が混ざり合うなんて、夢みたいな話が起るはずはない。

空想世界の力学は、現実世界では何の熱量も持たない。それは、過去数千年の人類の歴史が証明している。願って現実を変えられるなら、誰だって願ってきたはずだ。「哲学」や「科学」と同じように「願学」が発達してきたはずだ。しかし、そんな学問体系は世界のどこにも存在しない。空想と現実には、国境のように深い断絶がある。

 

だから、『顔の無い都市』からトウキョウに使いを出すなんて、無理だ。

 

ミクの言葉を借りて言えば、『顔の無い都市』(空想世界)とトウキョウ(現実世界) の国境を越えられる存在なんて、いるわけない。