PiPiは不思議な子
(『顔の無い都市』のミク 現われる)
「草ちゃん、PiPiはどう?」
「不思議な子だね。もとは商品名:ボークス社製ミニ・ドルフィー・ドリーム(MDD)DDH-01番なのに、それが天使製造人たるお人形作家さんの手で魂を吹き込まれて、活き活きと動き回っているんだ。ここはトウキョウであるにもかかわらず…」
「『顔の無い都市』の存在がいる、でしょ?」
(そう言うとミクは笑う)
「お人形を依代にして『顔の無い都市』の存在をトウキョウまで連れてこられるならば、君もトウキョウに出現できても良いんじゃないか?」
「わたしに会いたければ、草ちゃん自身が『顔の無い都市』まで来るしかない」
「トウキョウの人間に『顔の無い都市』への扉は開けられるだろうか?」
「鍵はPiPiちゃんが握ってるかもしれない。『現実作り』の巡礼路を進んでいけば、いつかわたしに会えるかもね」
(すこし寂しげな微笑を浮かべてからミクは言った)
「かつて草ちゃんが『顔の無い都市』に居た頃、よく歌ってあげたね。久しぶりに歌ってあげましょう。わたしの力はトウキョウで物理的な力を発揮できないから、初音ミクちゃんの声を依代にして…」
(しっとりと歌い始めるミク)
No.5 - 6 BWV 244 BACH Matthew Passion Alto ARIA ...