草一の帰還
(草一、久しぶりに草月事務所へ帰ってきたため、気後れする。しかし、彼には一応、作戦があった)
PiPiちゃんが、いくら子供だからって、果たしてこんなもので誤魔化せるだろうか...
PiPiくん、おはよう。いや~、参ったよ。さすが、行列のできるシュークリーム屋さんだね。お盆からずっと並んで、今日やっと買う順番がまわってきた。人気がありすぎると、かえって困りもんだね。さあ、お土産だよ。PiPiくん、食べたまえ
「いらない(プン)」
やはり、ダメか…。
「手遅れだったようじゃな」
「せんせいは、意地悪です。PiPiがソフビ人形だって知ってるでしょ! シュークリームなんて、食べられるわけないじゃない。プン、プン!」
PiPiくん、これには訳が...
...。
...。
「せんせい...」
Johann Sebastian Bach ~ Piano Concerto in A major ...
(PiPiは草一に手をさしのべ、優しく語りかける)
「せんせい、PiPiはお腹いっぱいですから。だから、シュークリームは食べられません。この10日間、せんせいがPiPiのために、山に籠もって『現実作り』をしてくれたこと、PiPiにはちゃんとわかりました。
だって、毎日、新たな存在の力がPiPiの中に入ってきたんだもん。だから、PiPiはいま、お腹いっぱいなんです」
PiPiくん...
「さあ、もう言いっこなしです。『現実作り』の巡礼路はまだまだ続くけど、晴れの日も雨の日も、秋も冬も春も、いつも一緒に越えて行きたい」
(猫おじさん、草一に鰹節削りを手渡す。それで鉛筆を削れという意味らしい)
「ソウイチ、武器を持て! 今日からまた、『現実作り』の巡礼路が始まるぞ」
は、はい。(草一、鰹節削りを受け取る。ふつふつと活力を取り戻し、颯爽と立ち上がる)PiPiちゃん、今日の『現実作り』は8時間で設定する。よろしく頼むね。
「はーい!」
(こうして草一の逃避行は大団円に終った)
P.S. 「ソウイチ、削り節と交換に、シュークリームはわしがもらっておくぞ」
(途中経過)
24:30 『現実作り』は全て順調。本日の終了予定時刻は早朝4時半なり。
5:00 『現実作り』8時間終了
8 317 ±0(猫仙人の慈悲によりこれまでの事務所の借金帳消し)