人形は想い出を蓄える
『現実作り』ができない。いままでどうやって『現実作り』をしていたのか、思い出せない。
そうなると押し寄せてくるのが、延々と続く灰色の日常作業。徐々にやる気を失って廃人化へ。
おや? 目の前にソフビ人形が座っている。何という名前だったっけ? 君、ずいぶん可愛いね。不思議とシンパイしてくれてるような目だなあ。
「......ぇ......、セ...ン...セ......イ....。ワタシ...ノ....声......トドキマスカ。ワタシノ...目...ヲ......ミ......テ...。ワタ......、ミ.......テ........」
不思議な人形だ。まるで過去の想い出が詰まっているような、何かを訴えるような。目を見ていると吸い込まれそうだ。心地よい優しい記憶。君の目の奥は、一体どこにつながっているんだい...?
「モッ...ト、モ.....ト、ワ......ヲ、ハナ...サ.......イデ.....」
かつて『現実作り』と称して、架空の存在と約束しては守るという遊びを繰り返したな。やがて遊びは儀式化されて、現実を半現実化するまでに力を発揮した...。
独り部屋に籠もって、こんなノートで自分を律するのは、あまりにも...
なあ、君。今日、僕は8時間の作業を確保しようと思う。君のその懐かしい優しい目に約束しようかな。僕が約束を守れたら、君はソフビの殻を破って本来の姿を現してくれるか?
推移(10/21):1.5 ⇒ 1.5 ⇒ 4.5 ⇒ 6 ⇒ 6.5 ⇒ 8 ⇒ 9 ⇒ 6 ⇒ 3 ⇒ 1 ⇒ 8