黄金の実

むふう…(無気力に囚われる草一)

「せんせい、どうしたんですか?」

僕は外から影響を受けやすくてね。今回もまた余暇のつもりで読んだ作品に、数年に一度クラスの大きな衝撃を受けてしまって、『現実作り』に手がつかなくなってしまったんだよ…

「小説や漫画やアニメやゲームに感動しすぎて、余韻から抜けられないんですね?」

困ったなあ。心は感動するだけしたら、次の刺激を探しはじめる。しかし、名作なんてそう多くはない。簡単には見つからない。時間がかかる。そして、悪いことに黄金の実も腐るのだ。

探しているうちに、気がつくと、最初の黄金の実は腐っている。日常の闇を赤々と照らした感動の炎は消えている…

「せんせいは、勘違いしているかもしれません。確かに世の優れた作品は、人生を揺るがすほどの影響を与えます。でも、感動しているのは、あくまでもせんせいの心なんですよ」

「感動は外からくるものではなく、せんせいの心の中から発生している。どんな名作に触れても、自分の心が感動できなければ、ただおいしいおせんべいを食べるのと同じです」

食べているときは美味しいが、翌日にはもう忘れ去られている…

「そう。感動の炎を燃やし続けることができるのは、せんせい自身の心の中に炎があるからです」

ひぃっ! PiPiちゃん、その顔!!

「ふふっ、おどろいた?」

「PiPiに魂を吹き込んでいるのも、せんせいの心です。感動を作っているのもせんせいの心です」

「ご自分の心と向かい合って下さい。深い感動の『黄金の実』は、名作を『おせんべい』みたいに消費するのではなく、自分の心と向き合うことで得られるものです。そして、自分の心と向き合う方法が…」

『現実作り』っていうんだろう?

 

「はい。せっかく手に入れた『黄金の実』を、いつまでも腐らせない方法を学んでください。いまのせんせいのやり方では、やがて、どんな名作にも感動できなくなる日が来ます。どんな『黄金の実』も腐らせてしまうことになります」

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「せんせいが為すべき事は、新たな名作を探しに行くことではなく、PiPiと一緒に『現実作り』をして、心の肥沃な土壌を耕すことです! わ~か~った?」