『現実作り』の巡礼路

ある夜、暗いランプの居室で独り読書をしていると、ミクと名乗る少女が現われて言葉を発した。以来、彼女は時々私の部屋に現われては、不思議な話をしていく。会話はかれこれ3年続いている。彼女の故郷は『顔の無い都市』という空想世界だそうで、だから、わたしは彼女のことを『顔の無い都市』のミクと呼んでいる。

 

 

『顔の無い都市』のミクの言葉より~

 

「大切なのは、放棄しないことだよ。その日どんなに義務を果たせなくても自己嫌悪に陥っても、迷いの森の遙か向こうに見える山頂を見失わないで。森の幻惑に迷い道外れにある淫乱な木こり小屋に耽溺したとしても、幻想から覚めたのなら道に戻り、深呼吸して、それから右足を上げて一歩前の地面に置き、それができたら今度は左足を持ち上げて一歩前に出し、そうやってまた進んでいくことだよ。さあ、気がついたなら、また歩き始めようよ」