ソウイチの独白
9月末に病気になって以降、回復してもずっと不調なんだ。ムリしようと思えばムリがきく。その意味では、問題はまだ日常の皮を被っている。だが、それゆえにあいまいだ。対症療法を施しても、低レベルの飛行を長引かせるだけだろう。
「もう! 考えすぎよ...」
不調は思考では脱出できない。人間が洪水を前にして無力なのと同様、無意識の濁流にはあらがえないもの。
のっぺらぼうの日常に対抗できるのは、物語の力だと思う。地道に具体的な小規則を守ることも当然だが(飲酒は月2回、間食はしない、12時就寝など)、それと同時に日常を超えた物語力を回復させることも必要ではないか。
「せんせい、物語を掴むのは大変なんだよ。諦めなければならないことも多い。絶対条件として孤独に耐える強さ、欲望を一刀両断する意志力、下らぬ噂に惑わされぬ賢さが必要だよ」
自分の物語か。
今日は酔っ払った。もう寝る。
「まったく、世話がやけるせんせいね...」