することがないのは幸運ね

(草月事務所 綱渡り状態でその日の『現実作り』に追われている)

 

来る日も来る日も『現実作り』に追われ、代わり映えのない日々。食べたい物は特になく、薄いコーヒーも飲み飽きた。物欲を満たす金はなく、世俗を離れて久しいため会う友もなく、旅に出かける余裕もない。酒を飲んでも一片の楽しさもない。

やることがない...

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「せんせい、やることがないのは幸運だね。食欲も物欲も愛欲も叶わないなら、感覚に我を忘れることもないでしょ。うんと『現実作り』に没頭できるじゃないですか。トウキョウでの束の間の満足なんか放っておいて、もっと『顔の無い都市』に目を向けましょうよ。ほらほら、目の前に、こ~んなにも可愛いPiPiちゃんがいるのですよ!

ほれほれ!

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もひとつどうだ!

 こうみえてPiPiは『顔の無い都市』の使いなんですからね。せんせいさえ扉を開いてくれれば、トウキョウでのちっぽけな欲望なんて、み~んな吹き飛ばしてやるんだから!!」

 

むふぅ...。確かに、PiPiちゃんの言うとおり、駄菓子も食べ尽くし、酒に酔ってもおらず、ネットショッピングをする資金も尽き、空白になったところで、案外、『現実作り』に没頭できたりするものだ。PiPiちゃんとの会話が再開されれば、不思議とトウキョウでの欲望に興味がなくなるというのも確かだ。仕方なくとはいえ、やることがないことは『現実作り』の巡礼者にとって幸運なこと。

PiPiちゃん、今日の『現実作り』、あと何時間残ってるかな?

 

「いま23時で、あと3時間分残ってます。約束、守る気ですか?」

やってみよう。『顔の無い都市』の力を出してくれるかい。

 

「いいですけど...。もう、12時に寝るって約束したのに!! せんせい、いっつも遅れるんだから。1日は24時間しかないんですからね!」

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